講座概要
優れた基礎研究を実際の臨床治療に応用するには、動物実験を実際に行なわれる臨床試験を外挿する知識、技術を持つ研究者が必要です。ヒトと生理学的解剖学的に同等性を持つ実験ブタを利用した研究は、ヒトでの治療を概挿するまさにヒト臨床を対象としたフェーズO(ゼロ)の試みで医学部における実学研究手法です。 本講座は、国内外の優れた研究者間のコンソーシアムを形成して、臨床に直結する実験医学を展開し、腎臓再生医学を実現することを目的にしています。
腎臓再生医学の展開
幹細胞研究の発展は目覚ましいですが、いまだ試験管内でヒトの臓器を作り上げることは困難です。このブレイクスルー実現のために世界最先端研究の中で、現在はブタの体内でヒトの臓器を作出する戦略が考えられています。 一方、患者体内で患者の臓器を育てていく手法も考えられています。これまで、ブタ等の異種動物臓器の発生過程を利用して、ヒトの臓器を作り上げるとう戦略は、世界に先駆け私どもが提唱し、Yamaton Kプロジェクトとして展開してきました(異種再生医学)。 さらに、組織幹細胞技術から作るオルガノイドを生体に移植して成熟を促す手法としてまず小腸オルガノイドで成功させました。この技術を腎臓作成にも応用し研究を進めるつもりです。
非臨床臨床一体型研究手法
マウス,ラット等の小動物の研究は,その治療法のプルーフ・オブ・コンセプトを示すことはサイエンスとしては極めて重要ですが、ヒトの体サイズからは大きくかけ離れ,安全性や有効性の検証には大型動物による前臨床が必要であります。 非臨床・臨床一体型研究手法とは,非臨床における動物実験と実際に行なわれる臨床試験の評価法を同一のものとして研究開発を行う手法ですが、ブタモデルを用いた前臨床移植等を実際にヒト臨床で治療を行うチーム医療として遂行する必要があります。使用する前臨床検証施設は、これまで私どもが開発してきた実験専用ミニブタとともに関連実験施設とのコンソーシアム体制で行います。
期待される効果
これまでわが国では、優れた基礎研究はなされてきましたが、臨床まで直結できる体制のもとで一貫した研究が行われてきませんでした。特にヒト臓器作出研究という突出した最先端研究は、大学間の枠を超え国内外の優れた研究者、医師が集結できる仕組みが必要でした。本連携拠点を作ることによりこれまで個の研究者で進めてきた研究を国内外の先端研究者と新しい産学連携のもと進められることに期待しています。
後進の育成
医学が学問として確立されたのは論文(文章)を先人が残してきたことから始まっています。 「腎臓再生・小林塾」は、医学研究を志す仲間が、月一回対面でじっくりデスカッションすることを原則としています。

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